2010年05月

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自衛隊の任務は臨検ではなく武力行使――臨検特措法の成立に抗議する

【5/28 追記】周辺事態法と自衛隊の臨検の関係について一部修正・加筆しました。

 臨検特措法案が本日参議院で可決された。おそらく明日にも本会議で成立するだろう。改めて強く抗議したい。

 今日はちょうど時間が空いていたので、参議院・国土交通委員会の審議中継を聞いていたのだが、今さらながら状況の凄まじさを確認できた。いくつか列挙してみよう。

1.臨検恒久法制定への動き

 前原誠司・国土交通大臣は、「日本の安全保障あるいは警察活動の充実」のためには、今回のような特措法では充分でなく、恒久的な臨検法の検討と制定が必要であると明言している(佐藤正久・自民党議員の質疑に応じて)。前原は、臨検特措法が公海での臨検を可能にしていることについて、「こういうものは曖昧な方がいい・・・不審な船が出てきたときに、どこでも対応できる」と述べ、さらに「いつでも対応できる」ための臨検恒久法制定への意気込みを表明しているわけである。もちろん、前原の意気込みは民主党政権の意思そのものであり、自民党などの右派も共有している。


2.自衛隊の任務は臨検ではなく武力行使である

 臨検特措法案では「関係行政機関は、第一条の目的を達成するため、相互に緊密に連絡し、及び協力するものとする」(第9条)と規定されているが、「関係行政機関」たる自衛隊の出動目的は、臨検ではなく端的に武力行使である。榛葉賀津也・防衛副大臣も、自衛隊には臨検を実施する法的根拠がないという佐藤の指摘を認める答弁をしている(具体的には、自衛隊の出動根拠となる自衛隊法第82条は、自衛隊が「とること・・・ができる」「海上において必要な行動」として、臨検を想定していないとのことである。ただし、ただし、周辺事態法が適用される場合は、自衛隊が臨検を行うことも法的に可能。具体的には、海域を指定した上で、自衛隊と海上保安庁が棲み分けをして臨検を行うことになる)。要するに、自衛隊への出動が要請されるのは、すでに海上保安官が北朝鮮国籍船舶(商船)への武力行使を開始している場合なのであった。再び(佐藤に対する)前原の答弁を引いてみよう(ただし、発言は正確な書き起こしではなく、要約や省略を含む。以下同様)。

前原:「〔自衛隊法第〕82条というのは、〔北朝鮮国籍船舶が臨検への同意を〕拒否し続けて、そのまま北朝鮮の船が体当たりをしてくるとか、発砲してくるとか、そういう場合は、海上保安庁として対応・・・正当防衛をしますが、それを超えた何かが起きようとしているときには、自衛隊に出てもらう。そういった状態において〔自衛隊が〕貨物検査をするという前提を取るのはおかしい。それを超えているから自衛隊にお願いするわけです。

 (佐藤に対する)榛葉・防衛副大臣の答弁も合わせて見てこう。

榛葉:「〔北朝鮮国籍船舶から〕激しい抵抗があった場合、海上保安庁では対応できなかった場合、自衛隊が対応します。海上自衛隊が護衛をしながら〔海上保安庁が〕貨物検査をすることは法的には可能ですが、現実的には難しいと思います。」

 まさに語るに落ちている。臨検特措法案における自衛隊の任務が、海上保安庁に代わる臨検ではなく、さらに海上保安庁による臨検の「護衛」ですらなく、純粋な武力行使であることを、政府自らが認めているのである。


3.臨検特措法で終わらない対北朝鮮強硬策

 李明博大統領の韓国哨戒艦沈没事件に関する「国民向け談話」を受けて、5月24日に開催された安全保障会議では、「まず、第1点、韓国を強く支持していくという立場から、国連安保理での対応を含め国際社会との連携、特に日韓、日米、日米韓の連携を強化していくこと。2つ目、我が国として、新たな対北朝鮮独自措置の検討を早急に開始をすること。3つ目、いわゆる貨物検査法案の早期成立に向けて全力で取り組むこと。〔中略〕最後に、引き続き、この予断を許さない状況下のもとに情報収集を強化するなど、国民の安全・安心の確保に万全を期」すことが決定されている。草川昭三・公明党議員などは、北朝鮮への送金の全面停止や資産移転禁止、北朝鮮寄港船(中国籍船が四割)の入港禁止などを政府にけしかけており、その一部が現実化する恐れもある。


4.武力行使をするのは自衛隊だけではない

 法案に賛成票を投じた渕上貞雄・社民党議員の質疑も紹介しておこう。内容はほとんどない、というかひどいのだが、最後のやり取りは重要である。

渕上:「政府が北朝鮮籍船舶の入港禁止や北朝鮮からの輸入禁止等の追加制裁を延長した理由をお伺いします。」

西村智奈・美政務官:「〔前略〕諸般の情勢を勘案して、対北朝鮮措置を継続することが必要と判断しました。〔後略〕」

渕上:「制裁を実施する中で北朝鮮との関係についてどのような努力をなされているのでしょうか?」

西村:「〔前略〕諸懸案の解決にとって重要なのは、北朝鮮に対して解決に向けて具体的な行動を取ることが利益になると理解させることです。〔後略〕」

渕上:「制裁を延長することによって理解するのでしょうか?それによる北朝鮮との関係改善はどの程度実効性を持つのでしょうか?」

西村:「特定船舶入港禁止特措法に基づいて・・・北朝鮮船舶の我が国への入港はゼロになりました。北朝鮮の厳しい経済状況と合わせて考えたときに、これは一定の効果を出していると考えられます。制裁を延長することによって、我が国の立場を明確にする効果があります。」

〔中略〕

渕上:「臨検に際して必要な旗国や船長の同意とはどのようなものなのでしょうか?書面で行うのでしょうか?それとも口頭でよいのでしょうか?」

西村:「〔前略〕なかなかどちらと限定はできないところでございます。〔後略〕」

渕上:「検査は必ずしも安全な状態であるとは限りません。相手の側からの抵抗や武力の行使も考えられますが、そのような場合どのような対応をするのでしょうか?〔中略〕海上保安官の安全確保はどのように行うのでしょうか?」

鈴木久泰・海上保安庁長官:〔海上保安官が〕武器を使用することも可能です。〔中略〕不測の事態も予想されるので、〔海上保安官には〕防弾防刃救命衣と防弾ヘルメットを装備させ、武器も携行させることで対応します。

 海上保安庁によるものであれ、自衛隊によるものであれ、北朝鮮国籍船舶への武力行使を前提とした法案について、社民党がそれを明確に認識した上で、確信犯的に賛成票を投じていることは、決して軽視するべきではないだろう。それでも護憲派は社民党にまだ何かを期待できると考えるのだろうか?

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