2011年06月

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小出裕章氏批判をめぐるリベラル・左派の「応答」への抗議(前半)

 前二回の「小出裕章氏「子どもを守るために大人は食べてください」への抗議」は、幸い読者から多数のコメントを寄せていただいており、予想以上に肯定的な反響が得られたようで、ひとまず控えめに安堵している。他方、リベラル・左派の間では、予想通りと言うべきか、私の小出氏批判の中身を見事に無視したまま、私の批判に「反論」し、小出氏の上記言説を支持する人々が少なくないようである。せっかくなのでこの機会に一部を取り上げておこう。

 簡単に経緯を説明すると、私の6月12日付の記事「小出裕章氏「子どもを守るために大人は食べてください」への抗議」を、(私の知らない)ある人が複数のMLに投稿したところ、「元文の紹介には、「運動を分断するものだ」というお叱りもありましたが、多くは小出先生の発言に自ら共感しよう、未来に向けて受けとめようという思索の表明」がなされたため、その人がそれらの「思索の表明」を同MLに「「レスポンスⅠ~Ⅳ」として順次紹介」しているという次第である。「レスポンス」は6月29日現在「Ⅲ」まで配信されており、CML上で全文を読むことができる。ではさっそく「順次紹介」していこう。


●「レスポンスⅠ」

 [CML 010324] 《再論:小出先生の「大人が食べなければならない」、レスポンスⅠ》
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2011-June/010193.html

 「レスポンスⅠ」は、要約すれば、小出氏の「子どもを守るために大人は食べてください」発言に対する「直解主義は、小出さんの真意を歪める」ものであり、「小出さんの真意」は「日本人にたいする倫理的要請と解すべき」なのだから、「小出さんの言葉を批判するよりは、どうしたらより汚染度の少ない食品を、福島の人に提供できるか、その方途を探るべき」だという主張である。

 とりあえず逐次突っ込みを入れていくが、小出氏は実際に「どんな汚染があっても〔中略〕なんとか買い支えよう食べようと呼びかけている」といった発言を頻繁に行っており、さらには「汚染を調べることがいいことなのかどうなのか」とすら述べてしまっている(小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ:「6月21日 海の汚染を調べれば漁師の生活を壊す。私は躊躇する。小出裕章(MBS)」)のだから、「直解主義」も何も、一連の小出氏発言を発言通りに解釈するのは、その発言内容に即して、至極当然のことである。そもそも私は「小出氏の「どんなに放射能で汚染されていても」「大人はあきらめて食べてください」という主張は、小出氏の意図はどうあれ、畢竟、東電や政府の責任逃れを追認し、命の格差の固定化を容認する言説として利用されるだろうし、実際に利用されている」と批判している(もともと小出氏の「真意」は問題にしていない)のだから、「小出氏の真意」をいくら持ち出してこられたところで、有効な反論になり得ないことは明らかではないか。

 仮に百歩譲って、小出氏の「真意」が小出氏の公的な発言とは別に存在する(と主張する)のであれば、それはそのような誤解を招く発言を続けている小出氏の自覚を問うべき話であって、小出氏の発言を「直解」する側に問題があるとする論法は、端的に破綻していると言うほかない。念のため述べておけば、「レスポンスⅠ」には「小出先生は〔中略〕大人が食べることを「規範にすべき」というのではなく、すでに「規範にせざるをえない」段階だ、という認識なのではないか」とあるが、仮に小出氏の発言が「子どもを守るために大人は食べてください」ではなく、「子どもを守るために大人は食べるしかありません」であったとしても、私の小出氏批判には訂正の必要性も余地もない。

 また、私は「子どもを守るために大人は食べてください」という「日本人にたいする倫理的要請と解すべき」言説それ自体が、外国人を含む貧困層やマイノリティに対する差別を再生産する「非倫理的要請」として事実上機能していることを示しているのだから、「小出氏の真意」は「日本人にたいする倫理的要請と解すべき」なのだから、小出氏を批判するべきではないといった反論が成り立たないことも自明だろう。例えば、私は「仮に、小出氏の提案――60禁、50禁、30禁……――が完璧に実現したとしても、そうした「食品」を買い求めるのは、現在の事態に最も責任を負っている東電や政府、原子力安全委員会、原子力安全・保安院の上層部、原発推進議員などではなく、文字通り飢餓状態に置かれている在日難民を含む比較的若年の貧困層が中心になるだろう」と具体的に指摘しているのだから、それに対して何ら反証もせずに、「今後は、栄養士さんが、カロリー計算をするように、消費者各人が、放射能の認容摂取量を調整できるように、食品にはベクレル表示を明記することが、必要である」などと言われても、理解に苦しむばかりである。

 さらに、私はわざわざ全文太字で強調して、「私たちが今するべきことは、「政府に対してきちんとしたデータを出」し、「汚染された作物はすべて買い上げ、汚染されていない食品を確保するよう要求すること」であり、「汚染された野菜は東京電力と政府が責任をもって賠償」するように働きかけることだろう」と述べているというのに、あたかも私が「どうしたらより汚染度の少ない食品を、福島の人に提供できるか、その方途を探る」ことなく、ただ単に小出氏の言葉尻を捉えて批判しているかのように読者に錯覚させるような文章が拡散されるのは相当に心外である。

 ついでに言えば、「レスポンスⅠ」は、「日本の都会生活者マジョリテイーの快適志向」やTPPの「脅威」をも理由として、小出氏の言説を擁護しているが、私たちには生存権というものがあるのだから、「東京などの大都会」の人々が、少しでも内部被曝を回避するために、仮に「輸入物しか食べない」という選択をする(せざるを得ない)としても、それは「原発を肯定しながら、放射能汚染を逃れようとする心情」として一蹴されるべきものではないし、まして「もうTPPを認めようという主張」に回収されるべきものでもない(小出氏の発言に関してむしろ問題にすべきなのは、小出氏の「原発を否定しながら、放射能汚染を甘受しようとする心情」が、東電や政府に極めて都合よく利用されていることだろう)。これは余計なお世話かもしれないが、「日本の都会生活者マジョリティーの快適志向」批判にせよTPP批判にせよ、小出氏発言を擁護する文脈で行うのは、一般の人々に対してほとんど説得力を持たないのではないか(「代替案」が国内産の放射性廃棄物を「食べる」ことだというのではあまりにもひどすぎると思うのだが・・・)。

 第一、現実にすでに日本は放射性廃棄物を「食品」と称して国内外にバラまくことで外国(人)におびただしい被害を押し付けているのだから、TPPの「脅威」を理由に私の小出氏批判に「反論」するのは、それこそ日本人「マジョリティー」としての責任放棄であると言われても仕方ないのではないか。「奴隷売買」を「起源」に持ち、「枯葉剤で大もうけし、遺伝子組み換え食品にのり出した」モンサント社などの「アグリ・ビジネスのグローバル企業」に対しては、私も無論批判的であるが、植民地支配と侵略の上に展開されてきた「日本の農業」の歴史的責任を追及することなく、「日本の農業を守る」ことを掲げるTPP批判に対しては、全面的な賛同が躊躇われるのも正直なところである(もちろん日本のTPP批判全般がそうだと言っているわけではないが、先進国の新自由主義批判は概してこうした傾向が支配的であるように思う)。

 なお、「日本人にたいする倫理的要請」の抑圧性・暴力性もさることながら、「福島では、小出さんとは別の意味で、この期に及んで地産地消を奨励していて、放射能被害の知識のない地元の人は、なんの自覚もなく、平気で汚染食品を食べています。いわきの小学校では、水の汚染を心配した父兄が、子供にミネラル・ウォーターを持たせると、学校側は、それを取り上げ、水道水を飲ませています。〔中略〕小出さんの「大人は、汚染物質を食べなければならない」という表現は、こうした無自覚な汚染食品の摂取と同列に考えてはならず、そうではなくて、日本人にたいする倫理的要請と解すべきものと思っています」という主張も、一般的には到底受け入れがたいものだろう。放射性廃棄物を安全であると騙されて「平気で」摂取するのはまずいが、危険性を重々承知で恐れおののきながら摂取すれば、事態は「倫理的」に好転するとでも言うのだろうか?

 さて、ざっと突っ込みを入れてきたが、これらは実は本題ではなく、私が分析してみたいのは次の問題である。この「レスポンスⅠ」は、いったい誰/何に対する何のための「レスポンス」なのだろうか?これが私(の小出氏批判)に応えるための「レスポンス」でないことは、「レスポンスⅠ」が私の小出氏批判の論理をことごとく無視していることからも(客観的には)明らかであると思う(そもそも「レスポンスⅠ」では私の文章は引用すらされていない。これが通常の反論から形式的にも逸脱していることは明らかだろう)。それでは答えを出す前に、他の「レスポンス」も見てみよう。


(後半に続く)

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