2012年02月

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「人道的侵略」産業とシリア(3)

■目次:
(1) はじめに
(2) 「アラブの春」という嘘(1)
(3) サルバドル・オプション――NATO側諸国からシリアへの「死の部隊」移設作戦
(4) 「戦争賛成左翼」への道――ジルベール・アシュカルとその植民地主義的利用者たち


(3) サルバドル・オプション――NATO側諸国からシリアへの「死の部隊」移設作戦

 アサド政権の転覆を掲げるシリア反体制派のスポンサーを務めているのは、例のごとく米国を始めとするNATO側諸国の面々である(▼17)。イスラエルの軍事情報サイトDEBKAは2011年8月14日付の記事でその一端を披露してくれている(翻訳・強調は引用者による)。

 「ブリュッセルのNATO本部およびトルコ軍最高司令部は、それぞれシリアに対する軍事行動計画――反体制派を弾圧するアサド政権の最前線に展開する戦車・ヘリコプターと交戦させるべく反乱軍を武装支援する計画――の第一歩を踏み出している。NATOの戦略は、リビアの空爆モデルを再現するよりも、むしろシリア政府の装甲軍を粉砕するために、反体制派に大量の対戦車および対空ロケット・迫撃砲・重機関銃を供給する方式を採用しようというものである。」(▼37)

 まるで他人事のような言い草だが、もちろん当のイスラエル諜報機関も、アサド政権を転覆するために、この「方式」を採用している。2011年5月10日付の「アイリッシュ・タイムズ」記事(▼38)は、アサド大統領肖像画の撤去を拒否したダルアーの若者を見せしめに殺害したテロリスト集団に対して(も)、イスラエルが密かに支援している旨を報じている。イスラエル与党リクードの国会議員アヨーブ・カラ(Ayoob Kara)は、「シリア国民評議会」(SNC)との親密ぶりをさらけ出し、イラン攻撃の一環としてシリアへの介入を公然と扇動している(▼39)。

 元MI6職員で現在ベイルートのNGOを運営するEU上級顧問のアリステア・クルーク(Alastair Crooke)によれば、イスラエルに敵対的な(パレスチナのハマースとレバノンのヒズボッラーを支援する)現アサド政権を転覆するべく米国に訓練と資金提供を施されたシリア人亡命者集団は、現地の有力者を買収して人々を「反政府デモ」に動員させ、真偽の疑わしい「虐殺ストーリー」を欧米メディアに売り込むためにNGOを手なずけ、暴力を過激化してNATOの介入を正当化するためにテロリストと提携しているという(▼40)。クルークは(ここで)語っていないが、もちろんMI6と英国特殊部隊(SAS/SBS)も、CIAとシリアの(旧)侵略国であるフランスの特殊部隊とともに、トルコやリビア、レバノンおよびヨルダン北部で「自由シリア軍」(FSA)に対する訓練と武器供給に日々勤しんでいる。

 これらNATOの傭兵は、アサド政権による報復を逃れるために、隣国からシリアへの越境攻撃を頻繁に行っており、ダルアーの場合には、ヨルダン北部のラムサー(Ramtha)が攻撃拠点として利用されているようである(▼41)。元FBI職員のサイベル・エドモンズ(Sibil Edmonds)によれば、政府自らシリアへの軍事侵攻を示唆しているトルコ(▼37)では、早くも2011年5月からイラク・イラン国境に程近い南東部のハッカーリで米・NATO軍がシリア反乱軍の訓練を実施しており、南部のインジルリク空軍基地からシリアへの武器密輸も行われているという(▼24)。CIAやMI6の工作員がすでにシリアに潜入していることも報じられている(▼42)。

 ちなみに、日本の「自衛隊」との関わりついて述べておくと、シリア反体制派やNATO側諸国が、シリアへの「人道的介入」プロパガンダの中で喧伝している市民の死傷者数には、ゴラン高原に向かう反イスラエル占領デモの最中にイスラエル軍に殺害された人々がしばしば含まれている(▼43)。ゴラン高原には1996年から「自衛隊」がPKO展開しており(1月20日の閣議決定で派兵期間がさらに延長された)(▼44)、日本政府も事態を把握しているはずだが、日本の政府やメディアにはイスラエルを控えめに批判する気さえないようだ(▼45)。

 話を戻すと、NATO側諸国によるシリア反体制派への軍事支援は、大規模な訓練と武器提供、資金援助に留まらず、兵士さらには部隊をも直接供給するものである。ロシアと中国が、シリアに対する国連「制裁」決議と(NATOによる無差別爆撃と地上軍侵攻のフラグとなる)「飛行禁止空域」の設定をめぐって、当初から拒否権を行使していたために、米国を始めとするNATO側諸国は、「サルバドル・オプション」と呼ばれる「死の部隊」の移設作戦を強力に推進してきた(▼15)。

 「サルバドル・オプション」は、レーガン政権時代の中南米で猛威を振るった米国お得意のテロリズムで、このとき隣国ニカラグアの5万人もの市民を虐殺したコントラの支援・統括を主導し、ホンジュラス「死の部隊」を新設・訓練したのが、当時(1981年~1985年)の駐ホンジュラス大使であったジョン・D・ネグロポンテである。ネグロポンテは2004年に駐イラク米大使に任命され、当時の経験とコネクションを利用して、再び反米レジスタンス指導者を暗殺するための「死の部隊」をイラクに創設した(▼46)。

 NATOによるリビア侵略目前の2011年1月下旬にダマスカスに赴任した現・駐シリア米大使ロバート・S・フォードと、オバマに任命されたCIA長官デイヴィッド・ペトレイアスは、共にネグロポンテのイラク時代の盟友――フォードはネグロポンテの在イラク大使館時代のNo.2、ペトレイアスは当時の「イラク多国籍治安移行司令部」司令官――で、ネグロポンテに倣ってシリア版「死の部隊」を配備し、米国務省・NEDおよび各種財団によるシリア反体制派への政治的・経済的支援を強化して、アサド政権に対するクーデターに邁進している。なお、シリアではこのからくりは周知の事実のようであり、フォードやエリック・シュヴァリエ仏大使に卵やトマトを投げつける抗議デモが行われている(▼47)。

 「サルバドル・オプション」の目的は、簡単に言って、
(A)NATOや「アラブ/トルコ軍」による全面的な軍事侵攻を経ずにアサド政権を転覆すること
(B)NATOや「アラブ/トルコ軍」による全面的な軍事侵攻を可能にしてアサド政権を転覆すること
である。いずれにしても、メディアおよび国際人権機関・NGOと連携してアサド政権を攻撃し――例えば、フィリップ・ボロピオンHRW国連担当は、シリアへの国連「制裁」決議をめぐって拒否権を行使しているロシアと中国をスーザン・ライス米国連大使ばりに罵倒している(▼48)――、「人道的介入」の「国際世論」を盛り上げるとともに(シリア政府が正当にも対テロ作戦を実施すれば、それを独裁政権による自国民の殺害として宣伝し、シリア政府が仮にテロを放置しても、その責任をアサド政権に押しつけて同じ宣伝文句を使うことができる)、自決権を掲げるシリアの人々を脅迫するものである(現在の政権が転覆されない限り、治安機関だけでなく一般市民へのテロリズムが継続されるという恫喝だ)。

 米国は長年にわたるコントラ戦争と壮大な選挙操作の末、1990年にニカラグアのサンディニスタ政権を退場させた。シリアに対してもNATO側諸国は(アラブ連盟に代弁させる形で)アサド政権の転覆を前提とした大統領・議会「選挙」の実施を強制しようとしている。

 前述したシリアでの大規模な爆弾テロは、まずアラブ連盟によるシリア「監視団」の到着翌日に起こり、次にスーダンのダビ団長が「何も恐ろしいことは見当たらなかった」としてシリアの治安について肯定的な調査結果を述べた(▼49)後に起こっている。これまた日本では一向に報道されていないようだが、先日リークされた「監視団」の報告書(▼50)は、
(1)「自由シリア軍」(FSA)を含む反政府武装勢力が、民間人と治安当局者、メディア関係者を故意に殺害し(1月11日にホムスでフランス人ジャーナリストを砲撃して死亡させたのもシリア反体制派である)、公共施設や交通機関、パイプラインを爆破し、シリア軍による対テロ作戦の引き金となったテロリズムに従事している事実を認め、
(2)国際メディアがシリアの民間人死傷者数や反政府デモの参加者数を誇大宣伝している(反体制派が喧伝しているシリア政府による弾圧事件は必ずしも存在せず、拘束者のリストも極めて不正確なものである)ことを批判する内容になっている(▼51)。

 「シリア国民評議会」(SNC)や「自由シリア軍」(FSA)のスポンサーを兼ねているサウジアラビアやカタール(▼52)などのGCC諸国が、報告書の作成中に「監視団」から自国の資金と人員を引き揚げ、さらに2月23日まで延長が決定されていた「監視団」の活動を唐突かつ強引に停止させた(▼53)のも、「監視団」がNATO側諸国の思惑と圧力に抗して、シリアへの国連「制裁」決議のお膳立てをする代わりに事実を報告したからであると思われる。NATO側諸国メディアでアサド政権の関与が自明視されているホムスの「虐殺」も、シリアへの国連「制裁」決議の投票日(2月4日)直前に起こっており、「ロシアの声」は、虐殺を行っているのはシリア政府ではなく「自由シリア軍」(FSA)であると報じている(▼54)。

 ところで、なかなか興味深いのは、シリア反体制派をNATO側諸国の傭兵に仕立て上げる、こうした帝国主義・植民地主義の常套手段を(も)、NATO側諸国の「戦争賛成左翼」が積極的に擁護しようとしているらしいことである。その典型例がフランスの「第四インターナショナル」の左派論客ジルベール・アシュカルで(ただし、アシュカルの出身はレバノンで、現在はロンドンに住んでいるが)、アシュカルは「シリア国民評議会」(SNC)の下部組織である「現地調整委員会」(LCC)にスカウトされて、2011年10月にストックホルムで開催されたシリア反体制派の会議で招待講演を行っている(▼55)。

 アシュカルの言説は、シリア反体制派への「間接的な」(すなわち外国軍による全面的な軍事侵攻には至らないレベルの)軍事介入の必要性を説くものであり、それをシリア人の「自決権」なる論理で正当化している点に特徴があると言える。次にアシュカルの主張とその受容構造を見ていくことにしよう。


▼37 Michel Chossudovsky, The Al Qaeda Insurgency in Syria: Recruiting Jihadists to Wage NATO's "Humanitarian Wars", Global Research, 2 September 2011, http://globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=26351

▼38 Michael Jansen, Syrian army closes in on Damascus suburbs, The Irish Times, 10 May 2011, http://www.irishtimes.com/newspaper/world/2011/0510/1224296603334.html

▼39 Mahdi Darius Nazemroaya, The Legal Regime being formed against Syria by the Arab League, SNC, and R2P, Strategic Culture Foundation, 29 November 2011, http://www.strategic-culture.org/news/2011/11/29/the-legal-regime-being-formed-against-syria-by-the-arab-league-snc-and-r2p.html

▼40 Andrew Rettman, Blueprint For NATO Attack On Syria Revealed --Strike on Syria is technically feasible, former French general says, Global Research, 11 August 2011, http://globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=25980

▼41 H. Sabbagh, Canadian Researcher: US Targeting Syria to Change Region's Geo-Political Reality, Global Research, 3 January 2012, http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=28489

▼42 Michel Chossudovsky, SYRIA: British Special Forces, CIA and MI6 Supporting Armed Insurgency. NATO Intervention Contemplated,
Global Research, 7 January 2012, http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=28529

▼43 Aisling Byrne, The NeoCon Propaganda Machine Pushing “Regime Change” in Syria, CounterPunch, 6 January 2012, http://www.counterpunch.org/2012/01/06/the-neocon-propaganda-machine-pushing-%E2%80%9Cregime-change%E2%80%9D-in-syria/

▼44 毎日新聞, ファイル:PKO延長を閣議決定, 2012年1月20日, http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120120dde007010069000c.html

▼45 以下のようなイスラエル―シリア反体制派寄りの報道ですら、日本語メディアではほとんど見つけることができない。

ロイター, ゴラン高原デモで23人死亡  イスラエルが発砲とシリア, 2011年6月7日, http://jp.reuters.com/video/2011/06/07/%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%83%B3%E9%AB%98%E5%8E%9F%E3%83%87%E3%83%A2%E3%81%A723%E4%BA%BA%E6%AD%BB%E4%BA%A1-%E3%80%80%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%8C%E7%99%BA%E7%A0%B2%E3%81%A8%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2%E5%AD%97%E5%B9%95%E3%83%BB6%E6%97%A5?videoChannel=201&videoId=211608388

▼46 Roland Watson, El Salvador-style "death squads" to be deployed by US against Iraq militants, Global Research, 1 December 2006, (The Times, 10 January 2005), http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=4027

▼47 Michel Chossudovsky, Who is US Ambassador to Syria Robert S. Ford? The Covert Role of the US Embassy in Supporting an Armed Insurrection, Global Research, 30 September 2011, http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=26873

▼48 Joe Lauria and Charles Levinson, ウォール・ストリート・ジャーナル日本版, Russia, China Veto UN Resolution on Syria, 2012年2月5日, http://jp.wsj.com/World/Europe/node_386890/%28language%29/eng-US

▼49 ロイター, 監視団入り後も戦闘やまず、シリア政府は拘束者755人釈放, 2011年 12月29日, http://jp.reuters.com/article/idJPTYE7BS00J20111229

▼50 League of Arab States Observer Mission to Syria, Report of the Head of the League of Arab States Observer Mission to Syria for the period from 24 December 2011 to 18 January 2012, 27 January 2012, http://www.columbia.edu/~hauben/Report_of_Arab_League_Observer_Mission.pdf

▼51 SYRIA. TEXT OF LEAKED ARAB LEAGUE MISSION REPORT Report Reveals Media Lies Regarding Syria, Global Research, 1 February 2012, http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=29025

▼52 Robert Asketill, Saudi Arabia and Qatar offer assistance to Syrian opposition, The London Evening Post, 27 January 2012, http://www.thelondoneveningpost.com/world/saudi-arabia-and-qatar-offer-assistance-to-syrian-opposition/

▼53 ロイター, シリア監視団の一部引き揚げ、連盟は国連安保理に問題提起へ, 2012年1月25日, http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81K0H120120125?feedType=RSS&feedName=topNews

ロイター, 訂正:アラブ連盟がシリア監視団の活動停止、治安悪化と弾圧継続で, 2012年1月30日, http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81K12020120130

▼54 The Voice of Russia, シリア ホムスの目撃者が糾弾「反体制派、アル・ジャジーラは虚言」, 2012年2月4日, http://japanese.ruvr.ru/2012/02/04/65342727.html

▼55 Gilbert Achcar, Syria: Militarization, Military Intervention and the Absence of Strategy, 18 November 2011, http://english.al-akhbar.com/content/syria-militarization-military-intervention-and-absence-strategy

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