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福祉排外主義とは何か――その言説構造を問う(中編)

前編の続き)


2.宮本太郎「新しい右翼と福祉ショービニズム――反社会的連帯の理由」

 次は宮本太郎の2004年の論文「新しい右翼と福祉ショービニズム――反社会的連帯の理由」(斎藤純一編著『講座・福祉国家のゆくえ⑤ 福祉国家/社会的連帯の理由』、ミネルヴァ書房、2004年、pp.55-85)を見てみよう。この論文は大半が先行研究の紹介に当てられており、むしろ解説論文と言うべきかもしれないが(もっとも宮本の論文全般にそうした傾向があるように思うが)、重要なのは、宮本が福祉ショービニズムを「福祉国家と排外主義の結合」とした上で、その主要な原因を「アクティベーションあるいはワークフェア」(p.61)の「政策のバランス」(p.81)に求めていることだろう。宮本の主張を簡潔にまとめると、次のようになる。

●北欧では、デンマークで国民党(▼4)、ノルウェーで進歩党(▼5)といった福祉ショービニズム政党が存在するが、「政治制度、政党制、政治文化などでデンマーク、ノルウェーと共通の特性を指摘されるスウェーデン」で、「(少なくとも現在までのところ)組織された福祉ショービニズムが確認されないのはなぜだろうか」(p.78)。

●その理由としては、選挙制度の相違や政治情勢の歴史的相違(▼6)、スウェーデンにおける労働組合の組織率の高さが社会民主党の基盤を維持していることも挙げられるが、最も重要なのは、スウェーデンのワークフェアが、「基本的には就労支援に重点をおいた懲罰的な要素の少ないものであり、今のところ、周辺層を構造的に切り離すものとはなっていない」(pp.81-82)ことである。

●逆に言えば、「就労支援を前提とし、その中での業績に応じた給付を提供するという」「ある種の業績原理」――「ただしその業績原理は、市場主義とは異なり、就労支援の制度を前提とし社会的連帯の原理とも融合している」(p.81)――、「このワークフェア的な政策のバランスが、業績原理あるいは就労の義務へと強く傾くならば、人々の関心は、特定の理由からこの原理に沿った義務を果たしていない(と見える)社会集団、たとえば政治難民に対して向けられ、人種主義を刺激していくことが考えられる。たとえば近年のノルウェーのワークフェア改革は、こうした就労の義務を徹底する方向ですすめられている」(p.81)。

 宮本の主張の核心は、福祉排外主義をもっぱら業績原理(能力主義)に基づく福祉規範の帰結(反動)として捉えていることにある。わかりやすく言えば、福祉排外主義におけるレイシズムは、福祉国家において「フリーライダー」(p.62)を許さないという<空気>が支配的になってきた際に、フリーライダーとして見なされやすい移民や難民がバッシングの対象となることで、結果的に「刺激」されていくものである、というわけだ。逆に言えば、宮本においては、福祉排外主義の台頭を防ぐためには業績原理(能力主義)が行き過ぎないような福祉規範・政策を打ち出すべきである(レイシズムはあくまで付随的な問題にすぎない)、という論理になってくるだろう。

 この論理の問題点については後編で扱うことにして、中編ではもう一つ別の論文を紹介しておこう。水島治郎が2006年に執筆した「福祉国家と移民――再定義されるシティズンシップ」(宮本太郎編『比較福祉政治――制度転換のアクターと戦略』、早稲田大学出版部、2006年、pp.206-226)である。私見では、この論文の最大の見所は、上記の宮本の主張が水島の言説にどのような変遷をもたらしたかという点にあると思う。


3.水島治郎「福祉国家と移民――再定義されるシティズンシップ」

 水島は2006年のこの論文で、再び「フォルタイン現象」と福祉排外主義を分析している(福祉排外主義、福祉ショービニズムの用語も頻繁に登場する)。ここで注目したいのは、水島が上記の宮本の見解を全面的に受け入れることで(▼7)、(少なくともこの論文においては)「フォルタイン現象」の背景が「「ワークフェア」の原理」(p.208)にほぼ収斂されていることである。もっとも、水島はワークフェアに関して極めて的確な指摘もしているので、以下に引用しておこう。


 しかしながら,このワークフェアの導入とともに,従来の福祉国家と明らかに異質の発想が入り込んできたことも否定できないだろう。〔中略〕「権利」の前提として「義務」「責任」を強調し,社会への「参加」をキーワードとするワークフェアにおいては,福祉に対する権利を認められるのは,基本的には自らの属するコミュニティに対する「責任」を果たす者のみに限定される。〔中略〕国家の過剰なまでの就労促進政策「にもかかわらず」職に就くことのできない者,あるいはそれに代わる社会活動などに参加する意欲がないと見なされた者は,その結果は個人の責任において引き受けるべきものとされたうえで,最終的には福祉国家から排除されるほかない。〔中略〕

 このような福祉国家の再編,そしてそれと不可分に進行するシティズンシップ概念の変質のもとで,移民や難民をはじめとするマイノリティが容易に「コミュニティへの義務を果たさない」シティズンシップの不適格者と見なされ,道徳的非難のターゲットになることは想像に難くない。ワークフェアの言説は,教育の場や労働市場において移民・難民が実際に直面する困難な状況よりも,むしろ彼らがコミュニティたるホスト国の社会にどれだけ貢献するのか,どれだけ参加する意思があるのか,を第一に問うものだからである。しかしこのことは現実には,彼らの多くを福祉国家に「包摂」するのではなく,福祉国家の構成メンバーたるシティズンシップそのものから「排除」する方向に働いていく。〔中略〕

 たとえばオランダでは,近年の移民政策の転換にあたって新たに重視されているのは,やはり移民の側の「義務」「責任」である。(pp.209-211)


 水島はさらに、「「福祉国家を守るために移民を排除」することを掲げる福祉ショービニズムは,アングロサクソン諸国よりも,福祉国家の発達したヨーロッパ諸国,とりわけ中西欧や北欧において広がりを見せているが,その背景には」(p.213)「〔引用者注:解雇〕規制の強いヨーロッパ型の労働市場においては,雇用者側は同一の高水準の賃金のもとでリスクの少ない自国民労働者の採用を選好するため」(p.212)「これらの国で移民が労働市場に参入することが困難である一方,高水準の福祉給付の対象には該当するために,福祉国家の一方的な受益者,あるいは福祉国家そのものへの「脅威」として可視化されやすい状況にある」(p.213)と述べ、「福祉国家の「ゲイテッド・コミュニティ」化(p.214)=福祉排外主義の台頭を説明している。

 繰り返すが、ここで注意したいのは、こうした水島の分析が妥当かどうかということではなく(私自身もこの分析が間違っているとは思わない)、2006年のこの論文では、「フォルタイン現象」の原因として水島が2002年当時に挙げていた、(1)主要政党の「オール中道化」、(2)レイシズム(もっとも水島はレイシズムを明示していたわけではないが、読者としてはそうした読み方が容易に成立しうる)、(3)新自由主義的改革の反動といった視点が、かなりの程度まで薄められてしまっていることである(▼8)前編で、私は2002年の水島論文について、「まさに自らをリベラルかつ「普遍的」価値の担い手として規定する、レイシスト的な国民マジョリティによって福祉排外主義が促進することを示唆している」と評したが、2006年の水島論文をそのように読むことは難しい。参考までに、2006年の水島論文の結論がどのようなものであるかを紹介しよう。


移民は果たして福祉国家にとって「負担」としてのみ論ずることが妥当なのか。最後にこの点について簡単に指摘しておこう。

 確かにヨーロッパ諸国においては,労働市場参入に困難の多い移民における失業手当や生活保護の受給率は相対的に高く,そこがまさに福祉ショービニズムによる移民批判の論拠となっている。

 しかし他方で,見過ごしやすいことだが,移民は概して年齢構成が若く,またそれゆえに健康で医療機関を受診する頻度も少ないことから,老齢年金や医療保険給付の受給率はむしろ当該国の国民より低いことが多い。移民は「福祉依存」どころか「福祉国家に貢献」している面もあるのである。〔中略〕

 福祉ショービニズムが「福祉国家の一方的な受益者」とのレッテルを貼りやすい公的扶助を中心に取り上げて移民を批判し,その主張が一般に受容されることで,「移民から福祉国家を守る」方向に進むことが現在のヨーロッパ諸国の流れとなっている。しかし老齢年金や,負担と受益の関係がみえにくい医療保険などに目を転ずれば,その論理は必ずしも成立しない。そして今後ヨーロッパ各国の高齢化が一層進み,若年労働力の不足が確実視される中で,ある時点で再びロジックが逆転し,「福祉国家を維持するために」移民労働力がやはり必要であるとする議論が浮上する可能性も否定できない。〔中略〕

〔中略〕女性や高齢者,失業者などの就労強化を進めるワークフェア改革によっても,将来に生ずるであろう大幅な労働力不足に対処しえないことが明らかになったあかつきには,再び福祉国家と移民との積極的な関係に光が当てられるのではないだろうか。「移民から福祉国家を守る」という現在のロジックが,「移民が福祉国家を守る」という新しいロジックに再反転する日は,そう遠いことではないのかもしれない。(pp.222-223)


 ・・・・・・要は、福祉排外主義は移民の受け入れが福祉国家の「国益」に適うようになれば弱まっていくのではなかろうか、というあまりにも他人事すぎる結論なのであった。これでは排外主義を容認することとほとんど変わらないのではないか。少なくとも、福祉排外主義を明白なレイシズムとして名指し、先進国の国民にその解体を迫る論理には程遠いと言わざるを得ない。もちろん、移民を福祉国家の「国益」のために排除・包摂することを実質的に容認するような、福祉排外主義をめぐる水島の言説は、日本の反貧困運動とレイシズムの関係性に見事に対応しているのである。

(後編に続く)


(▼4) 

 高齢者および障害者の看護と介護は公的責任である。我々は、こうした人々が国中どこでも同じ条件で、威厳のある安全な生活を送ることができるように保障しなければならない。医療および公共の病院は、最上の質を有し、原則として、税金によって公的財源を有しなければならない。予防的な医療に重点が置かれるべきである。(デンマーク国民党綱領)

 一見、社会民主主義政党と見紛うこうした主張は、他方において同じく綱領を貫く排外主義的な主張と併せて見る必要がある。デンマーク進歩党〔引用者注:デンマーク国民党の前身〕はケアスゴーが党首となった段階から、移民に対してはきわめて抑制的な政策を掲げるようになった。移民は原則としてこれを認めず、例外的に受け入れる場合でも、デンマーク語およびデンマーク文化についての知識が要求された。それでもケアスゴーが割って出るまでは、進歩党には創立以来の新自由主義的な主張が残っていたが、ケアスゴーの国民党はナショナリズムを前面に掲げることになる。より具体的には、在住三年で得られる外国人の地方参政権を剥奪し、さらには可能なかぎりの本国送還を実現することすら主張する。(pp.75-76)


 小川有美は「北欧福祉国家の政治――グローバル化・女性化の中の「国民の家」」(宮本太郎編著『講座・福祉国家のゆくえ① 福祉国家再編の政治』、ミネルヴァ書房、2002年、pp.79-116)で次のように述べている。


ヨーロッパの他の右翼政党と同様、北欧の右翼政党の支持基盤は「男性的」である。しかし(奇妙な防衛論理の)福祉国粋主義、国際化とEU統合への懐疑等は、女性を含む広範な有権者にとってセンシティヴな争点である。デンマーク国民党の党首ピア・ケアスゴーは女性であり、彼女は一九九九年の党大会で次のように演説した。「彼ら〔引用者注:移民〕は男性ショーヴィニズム、儀礼的屠殺、女児性器切除、女性を抑圧する服装と伝統、我々が暗黒の中世に耳にしたものを満載してやって来る」。(pp.109-110)



(▼5) 

一方において進歩党は、とくに近年、かつての反国家主義とは対照的に、高齢者政策などを中心に福祉政策に積極的な態度を強調している。たとえば一九九七年の選挙で、ノルウェー進歩党は「オイルマネーをもっと福祉に」というスローガンを掲げ、北海油田の収入を医療サービスの向上と高齢者福祉の充実に向けることを訴えた。この選挙では、進歩党は一五・三パーセントの得票を得て第三党に躍進する。二〇〇一年の選挙時の調査では、有権者の二六パーセントが進歩党こそ最善の高齢者政策をもっていると答えている。労働党を含めて、高齢者政策にかんしてこれだけ高い支持を得た政党は他にない。

 他方において、進歩党にとって、こうした福祉政策の展開は厳格な移民政策がその前提となっている。移民政策については進歩党は、まだ新自由主義的な政策が残っていた八〇年代半ばの段階から、排外主義的な基調を強めている。その具体的な政策は一定しないが、八五年の綱領では、スイス的な「ゲストワーカー」政策を提起した。また、九三年の綱領では、民族的に純粋な社会こそが理想であると公言し、非西欧からの移民については、年間千人に限定するというクォーター制度を打ち出した。さらに近年では、市民権取得にあたって言語テストを課すことを要求している。(pp.76-77)



(▼6) 

〔前略〕どのような要因がスウェーデンにおける新しい右翼の進出を抑制し、この点での北欧諸国内部の分岐を生み出したのであろうか。いくつかの点について指摘がある。

 第一に、もっとも単純には、選挙制度の相違であり、三カ国とも比例代表制を採っているが、議席配分に必要な得票率はデンマークが二パーセント、ノルウェーの場合は一部の議席を除いて制限がないのに対して、スウェーデンでは四パーセントと比較的にハードルが高い。第二に、スウェーデンでは七六年まで右派政党が政権をとることができなかったのに対して、デンマーク、ノルウェーではすでに六〇年代の半ばに右派政党が政権入りをして、福祉国家の解体に失敗していた。その結果、体制への不満票は行き場を失っていた。第三に、デンマークとノルウェーで進歩党の創立が相次いだ時期は、両国でEC加盟の国民投票が行われた後で、反EC意識が拡がる条件があった。これに対して、スウェーデンでEU加盟についての国民投票がおこなわれたのは九四年であり、さらにこの時には反EU票を吸収する政党が存在していた。(pp.80-81)



(▼7) 

〔中略〕本稿では,90年代以降とみに強調されており,ブレア政権下の「就労のための福祉」(welfare to work)をはじめとして国際的な広がりを持った,「ワークフェア」の原理に注目したい 2)。(p.208)



注〔中略〕
2) ワークフェア型福祉国家における業績重視の発想と福祉ショービニズムとの関連性についての指摘として,宮本,2004b を参照。(p.223)



宮本太郎,〔中略〕
――,2004b 「新しい右翼と福祉ショービニズム」 斎藤純一編著 『福祉国家/社会的連帯の理由』 ミネルヴァ書房,55-85頁。(p.225)



(▼8) このことは、同書の編者である宮本が、本論文を以下のように紹介していることからも明らかである。


 水島論文は,オランダを舞台として,さきにも取り上げられた「新しい右翼」の動向を分析すると同時に,それが移民制度にいかなる転換をもたらしつつあるかを明らかにする。雇用保障の強い保守主義レジームでは移民が新規に労働市場に参入するのは簡単ではない。にもかかわらず,オランダでは就労規範を強調するワークフェア型の改革が進行している。こうした制度特性と制度転換の相乗作用が移民排除の感情を方向づける。制度改革の帰結として,居住実態のある難民申請者の送還や移民への福祉給付の制限がすすめられているという。(vi はじめに)


 この論文でもフォルタイン(党)の「「啓蒙主義的排外主義」のロジック」(p.218)は取り上げられてはいるが、その位置づけは以前とは明白に異なっている。


 このような〔引用者注:フォルタイン(党)による移民・難民に対する〕「福祉濫用」批判が支持を集めた背景には,先述のような,オランダにおけるワークフェア型福祉国家への転換があった。1990年代半ば以降のオランダでは,労働党のコック(Wim Kok)を首班とする連合政権の下で,就労・社会参加促進を第一に掲げる福祉・雇用政策の導入が進み,その傾向は現在も継続している。生活保護受給者への就労努力義務の強化,就労不能保険給付認定の厳格化,福祉政策と雇用政策のリンクによる福祉給付受給者の労働市場復帰のルートの設定など,さまざまな改革が進められた(水島,2003)。(p.217)



 以上見てきたように,オランダにおいては90年代以降,移民や難民,ときには不法滞在者をも包摂する普遍的射程を持つ福祉国家が,選別的な発想を含むワークフェア型福祉国家への転換を果たしていくとともに,「移民から福祉を守る」ことを唱える福祉ショービニズムのロジックへの反転が急速に,しかも鮮明に進行した。しかもその変化は,「義務」や「責任」を前提とするシティズンシップの再定義と連動し,現実に労働市場や言語習得において不利な立場に立つ多数の移民や難民を「シティズンシップの不適格者」として排除する作用をも果たしている。そしてこれらの動きが,他の「豊かな」ヨーロッパ福祉国家の近年の変容――とりわけ,新右翼の進出による福祉ショービニズムの噴出――と通底するものであることは明らかだろう。(pp.221-222)

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