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Home > スポンサー広告 > 「慰安婦」立法と「国民基金」の連続性を問う (3)

「慰安婦」立法と「国民基金」の連続性を問う (3)

■目次
(1) はじめに
(2) 第二の「国民基金」としての「促進法」
 (2-1) 「促進法」豆知識
 (2-2) (b) 罪責を承認したうえでの日本の公式な謝罪――なし
 (2-3) (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可
 (2-4) (a) この問題に関して日本政府が所持しているすべての記録及び情報の開示――無理
 (2-5) (d) 加害者の処罰――論外
 (2-6) より完璧な「国民基金」への道――(A) 被害国の世論の取り込み
 (2-7) より完璧な「国民基金」への道――(B) 保守・右派の取り込みと「国民基金」関係者との「和解」
 (2-8) より完璧な「国民基金」への道――(C) 戦後補償運動の日本国家への回収の完成
 (2-9) 結論
(3) 「要綱案」とは何か――他者からの呼びかけの無化
 (3-1) 「要綱案」豆知識
 (3-2) (b) 罪責を承認したうえでの日本の公式な謝罪――なし
 (3-3) (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可
 (3-4) (a) この問題に関して日本政府が所持しているすべての記録及び情報の開示――無理
 (3-5) (d) 加害者の処罰――論外
 (3-6) アジアの他者を切断する「戦後補償」
 (3-7) 【資料1】戦時性的強制被害者補償要綱に対する意見
 (3-8) 【資料2】「戦時性的強制被害者補償要綱(第1次案)」に対する意見書
 (3-9) 【資料3】第二次案の作成のご報告 被害者並びに支援者の皆さんへ


(2-3) (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可

 次に、「促進法」が「生存被害者とその家族に対する適切な賠償」につながるかどうかを見ていくことにしよう。もちろん、自らの行為が犯罪であることを認めない加害者によるいかなる「賠償」も、「適切」なものになるはずがないのだから、いきなり結論に飛んでもよいのだが、せっかくなので条文を読んでみよう。

 「促進法」の第三条には次のようにある。

 「(名誉回復等のための措置)
第三条 政府は、できるだけ速やかに、かつ、確実に、戦時における性的強制により戦時性的強制被害者の尊厳と名誉が害された事実について謝罪の意を表し及びその名誉等の回復に資するために必要な措置を講ずるものとする。
2 前項の措置には、戦時性的強制被害者に対する金銭の支給を含むものとする。」

 本題からは少し逸れるが、第三条を単独で読む限り、「促進法」は十分根拠法になっているように思えるし、戦後補償運動関係者の中にも、この条文をもって「促進法」が直接の補償立法になると考えている(いた)人は少なくないようである。実際、少し前までは私自身「促進法」をそのように捉えていたし、何より「促進法」の推進派(例えば「署名」の呼びかけ人たち)がこのことを進んで語ろうとはしないので、おそらく一般の認識も同様だろう。

 けれども、「促進法」の末尾には次のように書かれているのである。

 「この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い、戦時性的強制被害者問題解決促進会議における調査推進委員会の設置等に関し必要となる経費は、平年度約千二百万円の見込みである。」

 年1200万円の予算では、とても直接の補償立法として機能するはずがないので、弁連協が認めている通り、やはり別に根拠法が必要になると考えるのが妥当だろう(ちなみに、藍谷弁護士などは、第三条は「促進会議」の設置を定めた第十条と「整合性がない」とはっきり述べている)。

 さて、ここからが本題である。第三条第二項に出てくる「戦時性的強制被害者に対する金銭の支給」とは何なのだろうか?つまり、ここでいう「金銭」とは、「生存被害者とその家族に対する適切な賠償」を意味するのだろうか?それとも、そうではないのだろうか?ここで再び、「率直」な吉川春子議員(当時)に聞いてみよう。2002年7月23日の参議院内閣委員会の会議録からの抜粋である。

 「○川橋幸子君 もう少し分かりやすい質問をしなければいけなかったと少し反省しております。

 質問の順番を変えまして、それでは実際に既にアジア女性基金から償い金を受け取った人には、この本法の措置としては金銭の支給はどのようになるのでしょうか。

○吉川春子君 アジア女性基金の償い金は全額国民のカンパによるものであり、政府の補償とは性格は違いますが、既にアジア女性基金の償い金を受給した被害者については、本法による補償金との二重の受給にならないように調整するものといたします。

 また、アジア女性基金の福祉支援事業は、政府のODA予算などから支出されているので、これもダブっては支給しないということにいたします。これは不当利得を生じないようにするための措置です。

 いずれにいたしましても、この法案で促進会議を設置することにしておりますので、具体的にはこの中で検討することになります。」(▼3)

 ・・・・・・まさに語るに落ちる、という慣用句の見本のような答弁ではないか。にわかには信じがたいかもしれないので、念のため参議院のサイトから落としてきた画像も添付しておこう(傍線は引用者による)。





 恐ろしいことに、発議者自らが、「促進法」第三条に規定される「金銭の支給」が「国民基金」を補完するものであることを認めているのであった。そうでなければ、他でもない「国民基金」との関係において「二重の受給」や「不当利得」といった認識が生まれるはずはないだろう。

 「国民基金」は、国家の法的責任の否認を貫徹するために、加害者が被害者に押しつけた、いわば単なる「見舞金」であった。その「国民基金」との「二重の受給」が「不当利得」(それにしても愕然とするような表現である。いったい被害者の自己決定権を何だと思っているのだろうか?)になるというなら、「促進法」が規定する「金銭の支給」も、当然のことながら、個人賠償ではなく、単なる「見舞金」であるとしか考えられないことになる。前節で私は「促進法」を第二の「国民基金」と呼んだが、より正確を期すなら、「促進法」は「国民基金」の補完と拡充を志向する、より完璧な「国民基金」であるとさえ言えると思う(これは本章第6節以降で述べる)。

 さて、この点に関連して重要だと思われるのが、「促進法」の第五条である。

 「(関係国の政府等との関係に関する配慮)
第五条 政府は、第三条に規定する措置を講ずるに当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束との関係に留意しつつ、関係国の政府等と協議等を行い、その理解と協力の下に、これを行うよう特に配慮するものとする。」

 つまり、「促進法」は、サンフランシスコ単独講和条約と二国間協定等によって賠償および請求権の問題は「すべて解決済み」であるという政府の公式見解を、控え目に言っても、否定はしていないのである。したがって、「促進法」が「生存被害者とその家族に対する適切な賠償」になりえないということは、条文を検討するだけでもある程度は推測できると言えるだろう。

 ところで、上記の吉川議員の答弁は、「促進法」のまさに核心と言うべき部分であるが、一般にはほとんど知られていないのではないかと思う。けれども、それは、戦後補償運動関係者までもがこの答弁を知らない、ということを意味するわけではない。実際、「国民基金」推進者のサイト(▼4)には2002年10月時点で上記の答弁が掲載されている。このことを考える上で大変興味深いと思われるのが、『季刊 戦争責任研究』編集部がまとめた同日(2002年7月23日)の参議院内閣委員会会議録の抜粋版――「「慰安婦」問題をめぐる国会での論戦」(▼5))――である。同記事の冒頭を引用してみよう。

 「[解説]
 二〇〇二年七月二三日に参議院内閣委員会でおこなわれた、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」についての論戦を本誌上で二回に分けて紹介する。この日の議論だけでも分量が多いので、この法案についての理解を深めるうえで参考になりそうな議論を中心に取り上げた。法案の提案者の説明を中心に取り上げ、質問者の発言についてはかなり抄録したために、質問者の考え方が必ずしもきちんと伝わらなくなっているかもしれない。この点で不備があればご容赦いただきたい。会議録の全文は、参議院のホームページ【http://www.sangiin.go.jp/】で読むことができるのでそちらでご覧いただければ幸いである。」(▼6)

 ところが、この抜粋版からは、「この法案についての理解を深めるうえで」、私から見れば、もっとも「参考になりそうな議論」――「国民基金」との関係性をめぐる議論――が、上記の答弁も含めて、ごっそり抜け落ちているのである。抜粋版自体が22ページに及ぶこともあり、わざわざネットで全文に目を通す読者などほとんどいないだろうから、一般読者としては、ここで紹介されていない議論はまず知りようがないと言ってよいだろう(編集部を信用していればなおさらである)。

 とすれば、当然、次のような疑問が湧いてこないだろうか。「促進法」の本質をもっとも深く知りうる立場にある人たちは、当初から、一般の人々に対しては、法案の致命的な欠陥を覆い隠しながら、そのアピールに励んでいる(きた)のではないだろうか?そして、あえて言ってしまうが、それは一般の人々が彼ら・彼女らに寄せている評価や信頼を、たとえ結果的にせよ、利用する形で行われている(きた)のではないだろうか?

 「促進法」における「金銭の支給」は、国家の罪責を認めない「見舞金」にすぎないのだとしても、民間基金ではないという一点において、「国民基金」とは異なるのであり、「促進法」を推進する運動(に関わる人々)を全否定するべきではない、といった意見も当然ありうるだろう。確かに、「促進法」は政府が直接「慰安婦」被害者に「金銭」を支払うことを定めている。けれども、重要なのは、それがどのような論理でなされるのか、ということである。弁連協が公言しているところによれば、「促進法」による「謝罪」と「賠償」は、自然債務の論理による、ということになっている。以下にWikipediaの定義を引いておこう。

 「自然債務の性質

 自然債務は、裁判手続によって実体法上の権利の存否を判断してもらうことはできず(訴求力がない)、従って債務の内容を強制的に実現することはできない(執行力がない)。しかし、債務者が自らすすんで履行した場合、それは有効な履行であって、債権者は、履行された目的物を返還する等の義務を負わない(これを給付保持力という)。」(▼7)

 つまり、「裁判手続きによって「慰安婦」被害者個人の請求権が認められるわけではなく、したがって日本政府には彼女たちに謝罪・賠償をする法的な責任はない。しかし、日本政府が任意に謝罪・賠償をすることはできる」。ゆえに、彼女たちに謝罪・賠償をするのは、日本政府の「道義的責任」である、というのが「促進法」に関する法的な立論なのである。どう考えても「国民基金」そのままだ。

 ちなみに、先に書いたように、このことは弁連協の弁護士が集会などで公言しているので、「促進法」の推進者の間では周知の事実であると思う。まさに、「国民基金」の推進派が、「個人補償にきわめて近い」、「ワンクッションおいた個人補償」などと言って、「国民基金」を自画自賛していたのと同じような状況が、より「左」である(と一般に見なされている)層を巻き込んで再現されているわけだ。

 それにしても、かつて「国民基金」に反対していたはずの「促進法」推進者たちは、日本政府の法的責任を何としても認めようとしない立場――「道義的責任」――にもとづく金銭の支給が、「被害者たちを不幸な同情の対象として冒涜する」ものである、という当事者たちの訴えを、本当に理解できていた(いる)のだろうか?残念ながら、私にはそうは思えない。

 「日本政府は民間募金を一日も早く撤回せよ。

 国際法的責任を履行しなければならないであろう。そうしてこそ、戦後五十年を迎え、戦後問題を一挙に片付けることができるのである。

 日本は、妙な野心で国連安保理常任理事国加入を推進しようとしているが、挺身隊問題および戦争の責任問題を解決しないでは、とうてい不可能であろう。したがって、賠償は日本政府の法によるのではなく、被害者ハルモニたちに対して、国際法の次元で行なわれるべきである。

 そうでなければ、被害者たちを不幸な同情の対象として冒涜することになるであろう。

 「日本政府は、国際法によって明白な賠償をすることを私たちは要求している」

 「日本は過去の戦争を反省し、真相究明をし、謝罪と同時に民間募金を即時撤回し、被害者に国際法的賠償を行なうことを要求するものである」

 一九九五年八月二十七日

 姜徳景(カン・ドッキョン)」(▼8)

 「促進法」は、再び「被害者たちを不幸な同情の対象として冒涜」し(ようとし)ているのではないのか?私が集会などで知りうる限り、「促進法」をめぐる戦後補償運動関係者の最大の関心事項(の一つ)は、被害者に支払われる金銭の額である。端的に言えば、「促進法」における「金銭の支給」は「国民基金」よりも安い金額にするべきではない、などとして、「国民基金」との差異化を図ろうとする議論が支配的なのであるが、これでは、被害者をあたかも金銭の授与対象か何かのように見なして、その尊厳を貶めてきた(いる)、「国民基金」そっくりではないか。「促進法」の推進者たちは、こうしたごく当然の問いに、はっきりと答えるべきだろう。以下に本節の結論を示す。

● (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可


▼3 「001-154 参議院内閣委員会17号」会議録、2002年7月23日、p.6 (検索結果のアドレスは一定時間しか有効でないため、以下に検索サイトを紹介する。開会日付を「平成14年7月23日」、検索語を「不当利得」などとして検索すると、会議録がダウンロードできる。(http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_srch.cgi?SESSION=573&MODE=1))

▼4 「「慰安婦」問題解決促進法──参議院内閣委議事録から」 (http://www.zephyr.dti.ne.jp/~kj8899/houan_sang.html)

▼5 「「慰安婦」問題をめぐる国会での論戦(上)」、『季刊 戦争責任研究』第38号(2002年冬季号)、pp.34-45, p15/「「慰安婦」問題をめぐる国会での論戦(下)」、『季刊 戦争責任研究』第39号(2003年春季号)、pp.73-82

▼6 「「慰安婦」問題をめぐる国会での論戦(上)」、『季刊 戦争責任研究』第38号(2002年冬季号)、p.34

▼7 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%84%B6%E5%82%B5%E5%8B%99

▼8 大島孝一・金英姫・有光健編、『「慰安婦」への償いとは何か―「国民基金」を考える 』、明石書店、1996年、pp.57-58

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