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社民党と東アジア共同体

 図書館で偶然見つけた『月刊社会民主』という雑誌(読んで字のごとく社民党の機関誌。誰が読んでるんだ?)の2009年11月号に、「アジア航路は波高し?――海から東アジア共同体を考える」という記事(▼1)が掲載されていた。著者は、元ピースボートスタッフでたまに講師を務める、金丸知好という自称「船旅革命家」(たぶんクルーズ業界関係者)。あまりマニアックなネタに走るのは本意ではないけれど、東アジア共同体に対する社民党のスタンス(▼2)がよく示されており、また巻頭記事として(表紙にも)大きく取り上げられてもいるので、ここで紹介しておこう。

 まず、この記事の内容を二文でまとめれば、次のようなものである。


 〔中略〕日本には新政権が誕生し、東アジア共同体の創設を掲げた。共同体の実現のために必要なことは山ほどあるが、「海の東アジア」という視点を持ってクルーズやフェリーを戦略的に活用していくことの重要性も忘れてはならない。(p.7)


 ・・・というわけで、いきなり結論だが、社民党は東アジア共同体構想について、よほど何も考えていないか、「国益」論的立場から(例えば「反貧困」政策の一環として)積極的に肯定しているのではないだろうか。以下が各論である。


1.歴史認識の欠如

 金丸は次のように主張する。


 「冷戦の負の遺産」が残る環日本海地域において日本、韓国、ロシアさらに中国が共同で手を携えることは、その解消にとって重要なこと。その第一歩が環日本海定期フェリーだ。(pp.6-7)


 念のため注釈を入れておくと、金丸は大日本帝国との連続性を断ち切るために東北アジア(ただし北朝鮮は含まれないところがポイント)でフェリーを活用しようという新基軸な提案をしているわけではない。金丸にとっては、どうやら侵略戦争・植民地支配責任という概念そのものがほとんど存在していないようなのである。ちなみに、彼によれば、「冷戦の負の遺産」は以下のように定義されている。


 これまで日本海に国際航路がなかったのは、国際的に孤立を深める北朝鮮とその核兵器保有・北朝鮮による日本人や韓国人拉致問題・朝鮮半島の分断・領土問題を抱える日本と韓国(竹島問題)そして日本とロシア(北方領土問題)・日本とアジア諸国に厳然と横たわる歴史認識問題・日本海(韓国は「東海」を主張)の呼称問題など、国際協力の枠組みをつくるにはさまざまな難題が山積みしているからであった。(p.6)


 念のため解説を入れておくと、これはシオニストが次のような主張を真顔でするのと同じくらい恥ずべきものだろう。


 これまでイスラエル=パレスチナ間を自由に往来できなかったのは、国際的に孤立を深めるハマスとそのロケット弾保有・パレスチナ人テロリストによるイスラエル兵士拉致問題・西岸/ガザ地区の分断・領土問題を抱えるイスラエルとパレスチナ(パレスチナ問題)・イスラエルとアラブ諸国に厳然と横たわる歴史認識問題・首都エルサレム(パレスチナは帰属権を主張)の呼称問題など、国際協力の枠組みをつくるにはさまざまな難題が山積みしているからであった。


 とりあえず、金丸のいう「革命」とやらは、(日本の)植民地主義を全面的に肯定するディストピアの到来を目指している、と言ってよいのではないかと思う。一刻も早く「革命」が挫折することを願うばかりである。ピースボートのことはよくわからないが、ここまで植民地主義をスルーする自称「革命家」を講師に招いて何をしたいのだろうか?


2.「国益」論的ご都合主義 

 金丸の脳内では、東アジア地域における日本企業の(再)進出が「平和」な東アジア共同体の実現と同一視されているらしく、日本の経済的覇権を脅かす中台接近については、それが「冷戦の負の遺産」の克服につながることにはお構いなしに、「中台接近がもたらす日本クルーズの危機」(p.4)と称して、ひたすら警戒を呼びかけている。


 日本にとって三通解禁(▼3)は、危機感を募らせる要因だ。欧米船社が日本を経由するコースを採らなくなると、これまで出入国管理を行なってきた港でその業務が大幅に減ることになる。このため、出入国管理や税関の担当者などの要員が余る可能性が出てくる。さらに船舶代理店は大幅な減収が見込まれる。〔中略〕現代の東アジアのクルーズ事情は「クルーズ大国の欧米の進出と、世界のクルーズシーンでプレゼンスを増していく中国、そしてその間にはさまれてうめく日本」という構図だといえよう。それどころか「中国を拠点にして日本は途中駅のように寄港するだけ、ヘタすればそれも台湾に取って代わられる」という形式のクルーズが増えていく可能性が高い。(p.5)


 金丸は、朝鮮半島の情勢についても、「環日本海定期フェリー」によって「孤立する北朝鮮を平和的に包括していく道も開けるかもしれない」(p.7)などと上から目線なピンボケトークをかましている。思うに、金丸にとって東アジア共同体とは、要するに日本の「国益」を膨張させるための道具なのであり、それを妨げる構造を「冷戦の負の遺産」と呼んでいるだけなのではないだろうか。これはつまり、朝鮮・中台の分断固定化は日本の「国益」上有利だから、それは克服すべき「負の遺産」ではないという、あからさまなダブルスタンダードであると思う。


3.人権意識の欠如・レイシズム

 金丸は、東アジアにおける人的交流の重要性を指摘してはいるが、実際には日本を訪れる外国人旅行者(特に中国人)を単なる経済資源としてしか見ていないようである。


 〔中略〕この船旅では、天候不順のため不発に終わった皆既日食の観測より、九州の三港での中国人ゲストの旺盛な購買欲とそれを大歓迎する九州の関係者の姿勢に目を奪われることとなった。福岡ではキャナルシティなどの観光地や市内の家電店で中国人の買い物客が大きな買い物袋をいくつも持っている姿が目に付いた。長崎では市内のアーケードに中国人観光客を歓迎する中国語ののぼりが林立し、彼らのために中国人留学生のお助けスタッフを配したりしていた。コスタ・アレグラを運行するコスタ・クルーズ(本社イタリア・ジェノバ)は中国発着の日韓周遊クルーズをスタートさせてすでに4年目になり、中国では今や最も人気のあるクルーズ船社としての地位を築いた。そして寄港地である福岡・長崎・鹿児島の人たちにとってもコスタ・アレグラは「毎週やってくる宝船」として定着している。(p.3)


 海外でブランド物を買い漁る日本人なら、それこそいくらでもいると思うが、中国人が日本で同じようなことをすれば(しかも家電製品とブランド物を同列視もできないが)「目を奪われる」というのは、中国が日本よりも遅れているという意識が強いからだろう。「ヘタすれば」台湾に「さえ」「取って代わられる」という危機感、出入国管理を経済効果としてしか見ようとしない、外国人に対する人権意識の欠如と合わせて、レイシズムと呼んで差し支えないのではないか。


4.大衆蔑視

 おそらくこの記事自体がクルーズ会社の安っぽい宣伝なのだと思うが、金丸は懸命にクルーズの魅力を売り込もうとするあまり、大衆蔑視観を炸裂させている。


 〔中略〕「セレブのためだけの楽しみ」などとは過去の話、いまや背伸びしなくても誰でも気軽に楽しめるようになった客船によるクルーズ。そして貨物だけでなく普段着の人々の足でもあるフェリー。(p.2)


 別に社民党の心配をする義理はないが、仮にも「反貧困」を訴える「庶民」の政党がこんな発言を機関誌に載せてしまうのはまずいんじゃないだろうか。記事にも「日本船の1泊料金」は「3~5万円」(p.3)とあるので、「誰でも気軽に楽しめる」というのは、どう考えても誇大広告だろう。


 〔中略〕日本人は「世界中すべてのクルーズがクイーンエリザベス2(2008年に引退)のような豪華客船、値段が高い・敷居が高い・ドレスコードがあって窮屈」、という恐ろしい勘違いを何十年も持ち続け、ついには固定観念化させてしまった。(p.4)


 まるで日本でクルーズが流行らないのは大衆がバカだからだというような話になっている。当たり前のことだが、大衆がそんなにバカなら、その大衆に逆の印象操作を施して(もしくは「事実」を伝えて)ブームを起こせない、(金丸を含む)クルーズ業界人はどんだけバカなんだよ?


5.無意識の排外主義

 金丸は冒頭で次のような前ふりをしている。


 「江戸日本橋より唐・阿蘭陀〔注:オランダ〕まで境なしの水路なり」。これは日本が鎖国をしていた18世紀末に、経世論家の林子平が著した『海国兵談』の一節である。子平はこの著で「日本は四方を海に囲まれた島国であるから、海防は重用である」と説いた。

 それから200年、鎖国時代は遠い昔となったが、日本が四方を海に囲まれている現実になんら変わりはない。断っておくが、ここでは兵談(海防論)をするのではない。(p.2)


 上述の通り、ここは回収されない無意味なフラグとして流してもよいのだが、この前ふりは金丸の無意識の排外主義を反映しているのではないかと私は思う。『海国兵談』は今でいう専守防衛論であり、決して軍事力を他国の侵略に用いることを説いているわけではない。けれども、林子平は幕府(『海国兵談』執筆完成時の老中は松平定信)に国防を固めさせるために、ことさらに中国とロシアを敵国視して、その脅威を煽る戦略を取った。結局、幕府は林の意見を採用せず、林を逮捕し、発行物と版木まで没収したのだが、中国・ロシアを仮想敵国とする『海国兵談』が幕末・明治の為政者や知識人に与えた影響――端的に言えば、それが朝鮮植民地支配とアジア侵略の正当化にどのような効果を与えたか――については、林の意図とは別に検証しなければならないだろう。

 金丸はたいして考えなく『海国兵談』を引いているのだろう(まさか読者に博識ぶりをアピールするためだとはさすがに考えたくない)が、仮想敵国を必要とする国防論を批判するでもなく、ただ漠然と日本の経済力に物を言わせた東アジア共同体の未来地図を称揚しているだけなのだから、軍事同盟としての東アジア共同体の主要な側面に対抗できないことはもちろん、中国や韓国(あるいは統一朝鮮)の経済力が日本を大きく上回り、日本が搾取される側にもなりかねない、という危惧がいったん日本を覆えば、容易に排外主義と手を取り合うことになると思う。


結論

 こんな記事を機関誌の巻頭に載せてしまう社民党は、よほどぼんやりしているか、金丸と程度は異なるにしても、歴史認識の欠如、「国益」論的ご都合主義、人権意識の欠如・レイシズム、大衆蔑視、無意識の排外主義を共有していると考えざるを得ない。どちらにしてもレベルが低すぎて、ろくでもない結論である。社民党はともかくとして、やはり東アジア共同体構想には警戒しなければならない。


▼1 金丸知好、「アジア航路は波高し?――海から東アジア共同体を考える」、『月刊社会民主』2009年11月号、pp.2-7

▼2 ちなみに、「社会民主党宣言」には次のように書かれている。


 (7)公正な国際経済と平和を基礎にしたアジア経済圏

 情報技術の急速な発展などが、国境を越えた経済の相互依存関係を拡大させる一方で、巨大な多国籍企業や金融資本が独占的に利益を獲得し、南北間の格差を拡大させています。また、企業が低廉な労働力の存在する発展途上国へと生産工程を移管することにより、国内産業の空洞化も進んでいます。成長と発展の恩恵が先進国や特定の企業にだけ還流することのないよう、通貨・貿易・信用取引きの公正なルール、国際的な自然環境の保護基準、国境を越えた労働者の権利の保障、多国籍企業の活動に対する国際的な規制を実現します。これらの観点を踏まえ、東アジア共同体構想を含め、平和と共生を基調にしたアジア経済圏の創設を進めます。



▼3 「中国と台湾の通商・通航・通信の解禁」(pp.4-5)。これによって「海上輸送でも中台間をダイレクトに結ぶコースの設定が可能になった」(p.5)。

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