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Home > スポンサー広告 > 「慰安婦」立法と「国民基金」の連続性を問う (14)

「慰安婦」立法と「国民基金」の連続性を問う (14)

■目次
(1) はじめに
(2) 第二の「国民基金」としての「促進法」
 (2-1) 「促進法」豆知識
 (2-2) (b) 罪責を承認したうえでの日本の公式な謝罪――なし
 (2-3) (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可
 (2-4) (a) この問題に関して日本政府が所持しているすべての記録及び情報の開示――無理
 (2-5) (d) 加害者の処罰――論外
 (2-6) より完璧な「国民基金」への道――(A) 被害国の世論の取り込み
 (2-7) より完璧な「国民基金」への道――(B) 保守・右派の取り込みと「国民基金」関係者との「和解」
 (2-8) より完璧な「国民基金」への道――(C) 戦後補償運動の日本国家への回収の完成
 (2-9) 結論
(3) 「要綱案」とは何か――他者からの呼びかけの無化
 (3-1) 「要綱案」前置き
 (3-2) (b) 罪責を承認したうえでの日本の公式な謝罪――なし
 (3-3) (c) 生存被害者とその家族に対する適切な賠償――不可
 (3-4) (a) この問題に関して日本政府が所持しているすべての記録及び情報の開示――無理
 (3-5) (d) 加害者の処罰――論外
 (3-6) アジアの他者を切断する「戦後補償」
 (3-7) 【資料1】戦時性的強制被害者補償要綱に対する意見
 (3-8) 【資料2】「戦時性的強制被害者補償要綱(第1次案)」に対する意見書
 (3-9) 【資料3】第二次案の作成のご報告 被害者並びに支援者の皆さんへ


(3-9) 【資料3】第二次案の作成のご報告 被害者並びに支援者の皆さんへ

第二次案の作成のご報告 被害者並びに支援者の皆さんへ

 昨1999年7月に「戦時性的強制被害者補償要綱」の第一次案を発表し、同時に韓国・中国・フィリピン・台湾・オランダの各国の被害者並びに日本を含めた支援者の皆さんにこれを送りました(▼87)。それぞれの立場から、この第一次案に対してご意見をいただきましたので、弁護団協議会では、これらの意見を基に第二次案を作成しました。韓国からは書面でご意見をいただきましたので、作成に当たっては、2000年1月15・16日弁護団から3名がソウルに参り、韓国の挺対協、遺族会並びに学者・弁護士とも討論しました。これらを基に作成しましたこの第二次案は、未だ異論のおありの点もあろうかとは思いますが、弁護団協議会としては要綱の最終案と致します。そこで、発表に先立って、被害者並びに支援者の皆さんにご覧いただき、本年4月27日に発表することに致します。各弁護団を通して送らせていただきますが、発表までにご賛同いただけますことをお願いし、その旨公表させていただければ幸いです。(▼88)

 第一次案と異なる点の中心は次の箇所です。

 第一次案では、被害回復を放置したことが日本国憲法の根幹的価値に関わる基本的人権を侵害するものであったとしておりますが、これだけでは「放置したこと」のみにとらわれ過ぎているとのご指摘がありましたので、二次案では性的行為を強制したこと自体が「当時の文明水準に照らしてもきわめて反人道的な行為であったこと」を謝罪・賠償の対象としました。(▼89)

 次に、第一次案でも、象徴的賠償の概念を基にしましたが、ならば端的に「補償」でなく「賠償」とすべしとのご意見がありましたので、「補償」を「賠償」とし、要綱案の名称も「戦時性的強制被害者賠償要綱」案としました。因みに下関判決も「慰安婦原告が被った損害を回復するための特別の賠償立法をなすべき日本国憲法上の義務」と述べています。(▼90)

 もう一つの点は、賠償すべき対象者を、第一次案では1993年8月4日の内閣官房長官の談話発表の時点の生存被害者とその遺族としておりましたところ、より対象者を広く認定すべきとのご意見がありましたので、これを1990年6月6日の生存被害者とその遺族としました。この時点は、日本の国会で本岡昭次参議院議員が政府に対し「慰安婦」問題の質問をした時です。日本政府が「慰安婦」の存在とその問題を認識した時点を賠償の対象時点とする考えは変わりませんが、この質問時点において、日本政府が認識を持つに至ったということが可能との考えになりました。(▼91)

 他に細かい改正点はありますが、基本的な考えとして改めたのは以上です。詳細は、各条項のコメントをご参照ください。

 弁護団協議会としましては、前述のとおりこれを最終案といたしますが、今後、この要綱をどのように実現に向けて活用していくか、改めてご支援の方々とも相談して決めたいと考えております。

 ところで、この度、日本の民主党から「戦時性的強制被害問題の解決の促進に関する法律(案)」が公表され、今次通常国会に提出されるとのことですので、この法律(案)と、本要綱第二次案との関係について一言付言いたします。この民主党の法律(案)は、戦時性的強制被害問題に対処すべき基本的事項を定めることにより、戦時性的強制被害に関わる問題の解決の促進を図ることを目的として、戦時性的強制被害問題解決促進会議(以下促進会議といいます)を設置することとしております。この法律(案)が戦時性的強制被害問題の解決の促進を図るものであることに鑑み、弁護団協議会としましても、立法化に対する関係議員のご努力に感謝しつつ、これに賛同し立法化に協力したいと考えております。同時に、この法律(案)は、基本的事項を定めることと、促進会議の設置の提唱に留まっておりますことから、今後この促進会議が具体的問題の解決を図る段階にいたったときには、私どもの提案致します本要綱案に示した解決の枠組みを、念頭においた解決方策とされるよう要望するものであります。以上が、民主党の法律(案)と本要綱との関係についての弁護団協議会の基本的考えです。(▼92)

 この要綱案が、戦時性的強制被害の問題解決のための礎となりますことを祈念して本要綱第二次案を送らせていただきます。(▼93)

2000年3月
「元『慰安婦』の補償立法を求める弁護団協議会」
座長 藍谷 邦雄


戦時性的強制被害者賠償要綱案

〔省略〕


要綱案に対する説明


1.目的
 この法律は、国が、第二次大戦の戦前戦中期において、旧日本軍の直接的間接的関与により女性に対し軍「慰安婦」等として性的行為を強制したことが当時の文明水準に照らしてもきわめて反人道的な行為であったこと、戦後その被害を放置し続けたことが、日本国憲法の根幹的価値に関わる基本的人権の侵害であったことを認め、これら女性個人(『戦時性的強制被害者』という)に対してこれを謝罪し、賠償することを目的とする。


コメント

① 賠償対象の期間
 本要綱では、「第二次大戦の戦前戦中期」としたが、具体的対象期間としては1931年から45年を想定している。ここでは、表現の方法として上記のようにしたが、法案では具体的期間を示す必要があると考える。(▼94)

② 対象者
 本要綱では、参加した弁護団の抱える依頼者が全て日本人以外(サンフランシスコ平和条約発効時に日本国籍を有しないとされた者)であることから、日本人以外を対象と想定しているが、日本人を含めるか否かは、別に運動上の問題として検討される必要があるであろう。対象者を日本人以外にする旨を法律の中に入れる必要があるか否かは更に検討する。(▼95)

「~たことが当時の文明水準に照らしてもきわめて反人道的な行為であったこと」との部分は、軍「慰安婦」としての性行為の強制が当時においても違法であったことを明確にするために第二次案において追加した。(▼96)

上記の文言および「日本国憲法の根幹的価値に関わる基本的人権の侵害」の文言は下関判決に依拠したものである。本要綱案は、同判決において立法の必要性として強調された論理を最大限生かしていくことを前提に検討された。そこで、同判決の論理の中心となっている言葉をここで使用することとした。なお、「日本国憲法の根幹的価値」との文言には、本件の賠償を通じて日本のあり方自体がただされるべきであるとの意味も込められている。(▼97)

目的には「侵害を認め」「謝罪」「賠償」の3要件を入れることとした。このことにより、この法律によって支給される一時金の性格が象徴的賠償の意味を有することを明らかにした。なお、第一次案においては「補償」との用語を用いていたが、軍「慰安婦」に関わる国家の行為が不法であることをより明からにするため、第二次案においては全て「賠償」と改めた。下関判決も国には「慰安婦原告らの被った損害を回復するための特別の賠償立法をなすべき日本国憲法上の義務」があると判示している。(▼98)

この目的の趣旨に副った国会決議等の方法で謝罪をなす必要があると考えられる。(▼99)



2.戦時性的強制被害者――定義
 戦時性的強制被害者とは、これに該当するものとして内閣総理大臣が各国または地域別に類型的に指定する受給要件を充たす者とする。


コメント

① 名称――「戦時性的強制被害者」とした意味について

 名称については、上記の他に「元日本軍『慰安婦』」「戦時性奴隷制被害者」とする案や「戦時性暴力被害者」とする意見があり、後者はかなり有力な意見でもあった。被害者を表現する言葉として何が相応しいかは、本要綱においては後に述べる対象者をどの範囲に想定するかに関わる問題である。どのような被害の態様を本要綱でいう賠償の対象とするかということである。

 そこで、被害の態様について、概略であるが誤解を恐れず分類してみれば次のように言うことができる。

・概略して被害の態様は
 a. 「慰安所」での被害――軍の直接又は間接的関与
 b. 組織的又は継続的な強姦
 c. 一時的な強姦
 の3類型が考えられる。この中、どの類型までを賠償の対象とするかで名称も異なってくる。これまでの検討結果では、下関判決を生かす立場からa.bの範囲とするのが妥当であると考えている。尚、、bを組織的又は継続的としたのは、組織的な場合には一過性のものも含む趣旨である。

・尚、先程の言葉に則していえば、「戦時性暴力被害者」の文言ではcを含み、「戦時性奴隷制被害者」等の文言ではaに限定して理解されるおそれがあり、「戦時性的強制被害者」が妥当ではないかとなった。(▼100)

② 対象地域

 対象地域を、法律事項(法律の条文に明文化すること)とするか、政令等の下位法令とするかは議論のあるところではあるが、ここでは内閣総理大臣の指定するものとした。対象地域によって被害の態様等種々の相違があり、解決の難易度も違いが生じることも考えられる。そこで、例えば地域毎の順次支給とする等の方法も可能とするため、運用による弾力性をもたせるためのものである。(▼101)



3.賠償
 国は、戦時性的強制被害者の中、1990年6月6日の生存者またはその遺族に対し、この法律に基づき、一時金として戦時性的強制被害者一人当たり金〔〇〇〇万〕を支給する。


コメント

① 賠償の法的根拠――創設的規定 or 損害賠償義務の確認規定か?

※最も議論のあるところ。創設的規定とは、この法律に基づいて新たに賠償を求める権利が発生することを定めるもの。損害賠償義務の確認規定とは、既に賠償を求める法的権利があるが、特に戦時性的強制被害については特別法として賠償義務の確認をし賠償の方法等を定めるものをいう。

 損害賠償義務の確認とした場合には、従来の法体系の中で損害賠償請求権が存在することが前提となるが、法的根拠については裁判でも種々の主張をしているとはいえ、確定的な法的権利として確立していない現状がある。下関判決でも、立法不作為による損害を認めたものの、性的強制被害自体の損害については立法的解決を促すものとなっている。加えて損害賠償義務の確認とした場合には賠償金額の立証を要し、且つ金額も区々となるであろう。この場合には、立証の困難さがあることと伴に定額の一時金とはし難いものとなる。又、下関判決に副って放置し続けたことの責任を問うのは新たな権利とした方がよいのではないか。その他、平和条約で解決済との主張に対しては、創設的規定ならば、仮に解決済であっても新たに賠償することに憲法上の違反が無い以上法的には問題ない。つまり法的にクリアーできうる。等々の考えがある。

 以上の議論の下、
・ここでは創設的規定との考えに基づいたものとした。
 注:「この法律に基づき」との文言が、それを意味する。
・且つ、定額による象徴的賠償との考えを基にした。
 注:1.目的 の項で、賠償金の性格を「法的責任を認め、謝罪し、賠償する」との言葉で、支給する賠償金の意味づけをしたことによって、象徴的賠償の性格をもたせた。(▼102)

② 創設的規定とした場合の権利と従来の損害賠償請求権との関係

 この法律によって定められる権利は、あくまでも新しい法律上の権利であって、従来の損害賠償請求権とは別のものであり、それに影響を及ぼさず、損害賠償請求の裁判等は引き続き行いうる。但し、後に述べる損益相殺はありうる。(▼103)

③ 賠償金の性格――一時金か年金か?

 年金とする方が、現実の被害回復には適するのではないかとの考えもあるが、本要綱の趣旨は、金銭賠償による象徴的賠償の意味をこめて考えれば、一時金が適するのではないかとの考えから、ここでは一時金とした。

④ 賠償金の額――今後の議論に委ねる

 ここでは象徴的賠償との考えで一時金としての額を考える。金額は案としては提起しない。各位の意見を集めた上で確定することとした。

 金額は後の放棄条項との関係での考慮もあるが、本要綱では放棄条項は必要ないとの考えである。

 注:放棄条項とは、この法律に基づく支給によって、今後損害賠償の請求はしないことの確定をすること。受給した場合訴訟は取下げとなり、新たな訴えもできない。

 類似法の例としては、USAの対日本人強制収容の賠償法に放棄条項があるが、これは大量訴訟による和解により取下げがなされたことが先行的にあったことによる。日本の法律では放棄条項の例は殆どない。

 但し、放棄条項がなくとも、損害賠償を求めた場合に受給の範囲で請求が充たされていると見なされる損益相殺の対象とはなりうる。(▼103)

⑤ 対象者

 同種の立法例では立法時の生存者のみを対象とするのが通常であるが、ここでは自ら元「慰安婦」であることを名乗り出ながら立法までに死去した被害者を賠償の対象に含めることを意図して「1990年6月6日時点での生存者またはその遺族」を対象と規定した。右の基準日は軍「慰安婦」問題が日本の国会で取り上げられた日であり、下関判決でも、そのころには被害者への放置が「違憲的違法性を帯びるようになった」と指摘されている。第一次案では内閣官房内閣外政審議室調査報告書公表の日を基準としたが、賠償の範囲をより拡大するために第二次案では前記の基準日に変更した。

 なお、前記の基準日以前に死去した被害者についてはメモリアルの設置などにより償いが行われるべきであるが、本要綱は当面の課題である謝罪と個人賠償を規定し、その余は今後の課題とした。(▼104)



4.戦時性的強制被害者賠償委員会
 内閣総理大臣は、賠償金の受給要件の認定手続及び支給方法の確定並びに賠償金支給の実施のために、独立の戦時性的強制被害者賠償委員会を設立する。


コメント

① 所管

 行政としてどの省庁の所管とするかの問題である。これまでの経緯からは厚生省、外務省等が考えられるが、ここでは、内閣とした。(▼105)

② 委員会の性格

 ここでは、委員会を独立行政委員会とする。独立行政委員会とは、内閣の統制下にあるが、上級の指揮監督機関から独立してその権限の行使が認められるものである。独立行政委員会は委員会規則を制定しうるメリットがあり、実態を独立性のあるものとすることが可能である。委員会が内閣の恣意により運営されるのではなく、被害者や被害者の支援団体の意思を反映して運営されることを明確にするため、第二次案では「独立の」という確認的な文言を追加した。(▼106)

③ 認定機関

 賠償委員会を設置し、そこが認定する。

 その場合には、委員の任命者、委員の構成、委員会の権限等の定めにおいて独立行政委員会の性格を維持することが重要である。(▼106)

④ 不服申立手続

 委員会の受給決定(棄却の場合)に不服の場合は、その決定の取消を求める手続が必要であろう。行政委員会とすれば、行政処分としての性格を有することとなり、上級庁に不服を申し立てる行政不服手続を経た上、処分の取消を求めて訴訟を行う行政訴訟手続きによることとなる。(▼106)

⑤ 実施機関

 支給の認定がなされた後、支給を実施する機関として賠償委員会を実施機関とした。実際の支給に当っては、各地域の実情を考慮して実施すべきである。(▼106)

⑥ 行政委員会規則か法律事項か

 申請権者、申請手続等を法律事項とするか行政委員会規則とする。考慮の余地ある問題であるが、ある程度の要件は法律事項とするのが望ましい。その場合の要件として必要なものは以下のような事項がある。

・個人からの申請を要件とするか、或いは委員会の職権探知とするか、議論のあるところだが、前者とすべき。個人の意思は常に尊重すべきだからである。
・その場合でもNGOの代理を可能なものとする必要がある。
・公知の被害者には職権も可とすべき場合もあるが、政府に周知する義務を負わせ一般的な職権探知は不可とすべきである。(▼107)



5.事業の実施と広報義務
 国は、この法律に基づく賠償金の支給事業を5年以内に完遂できるよう努め、そのための広報活動をしなければならない。


コメント

① 法的な考え

 ここでの考えは、事業の完遂を5年以内に行うことを目標とすることを規定するものである。では5年以内に支給決定の出なかった者についてはどうするかが問題となる。5年の期限を切ってそれまでに支給の申請をしなかった者には打ち切りとする考えもある。これを時限法という。しかし、本要綱では時限法の考えは採らない。何故なら地域、人によって5年で完遂できるか難しい場合があること、前述の順次支給の考えもあること等による。

注:時限法とは?
・期限を切って請求を遮断すること。USA日本人への賠償は時限法
・時限法とした場合は、積極的に国が申請を促すか或いは職権により探知する等が必要となる。USAの場合は国が積極的に探知した。

② 広報義務

 本要綱では、時限法とはしないが、国に積極的に申請を促す努力をするべき義務を負わせた。これを広報義務として規定した。(▼108)


▼87 送付先が「韓国・中国・フィリピン・台湾・オランダ」の五カ国に限られているのは、「元『慰安婦』の補償立法を求める弁護団協議会」の参加弁護団がこれらの国の被害者を原告とする裁判を担当しているからである(【資料4】)。第一に、自分たちと「関係」ない被害国・被害者の意見にはそもそも関心さえ示さず(インドネシアでは被害者の「実数を把握できない」のだから「記念碑などで代替」するべきなどというナメた発言もここから来ていると思う。北朝鮮にいたっては言及すらされていない)、第二に、自分たちと「関係」する被害国・被害者の意見はそれが本質的なものであるほど身勝手に切断していくのだから、「要綱案」を「各国の被害者」に送る行為そのものが他者への応答可能性をあらかじめ裏切っている。

▼88 この書簡は「国民基金」が婦援会に宛てた最後通牒を私に思い起こさせる。以下に引用しておこう。

 「一九九七年三月二一日
台北市婦女救援社会福利事業基金会
 理事長 沈 美真 先生

 謹啓

 皆様におかれましては益々ご清祥のことと、お慶び申し上げます。

 私たちアジア女性基金は、台湾における貴会の慰安婦問題への取り組みに敬意を表し、基金事業についての貴会のご理解とご協力を賜りたいと、面談をお願いし続けてまいりました。残念ながら私たちの要望は、一九九六年一月以降、一度も受け入れられず今日に至っております。最近では一九九七年二月一八日付けで書簡を差し上げましたが、いまだにお返事を頂戴しておりません。

 アジア女性基金は一九九五年八月一五日以来、日本国民がまごころから寄せた償いの気持ち(償い金)をお預かりしており、これを被害者へお届けする義務があります。台湾においてアジア女性基金はいまだに事業を開始できずにおりますが、ここ数カ月の間にも、既に三名の台湾の被害者が亡くなられたと聞いており、これ以上今の状態を続けて時を費やすことはできないと考えております。私たちが最も望むことは、貴会のご理解を得て貴会に台湾における事業の受け皿団体となっていただき、一日も早く被害者の方々に対する償い金支給と医療・福祉支援事業を開始させることです。

 改めてこの書簡をもって、貴会がアジア女性基金の事業実施にご協力いただけるか否かをお尋ねしたいと存じます。この質問への回答は一九九七年三月三一日までに頂戴したく、この日までにご回答なき場合は、貴会のご協力は得られないと判断し、アジア女性基金は独自の方策をもって事業開始の準備に着手いたします。

 この件につき、よろしくおとりはからいのほどお願い申し上げます。

 皆様のご健康とご発展をお祈りいたします。

 敬具

(財)女性のためのアジア平和国民基金
 理事長 原 文兵衛」(鈴木裕子、『戦争責任とジェンダー――「自由主義史観」と日本軍「慰安婦」問題』、未来社、1997年、pp.223-224)

▼89 「「放置したこと」のみにとらわれ過ぎているとのご指摘」とは、なかなか笑える解釈である。挺対協や金昌禄氏が批判しているのは、「要綱案」が日本軍「慰安婦」のもともとの犯罪行為から日本政府を免責すること「のみにとらわれ過ぎている」ことである。もちろん、これは「性的行為を強制したこと自体が「当時の文明水準に照らしてもきわめて反人道的な行為であったこと」を謝罪・賠償の対象とし」た第二次案でも忠実に継承されている。

▼90 この文言の変更が単なる小細工であることは注68を参照。なお、「象徴的賠償の概念」については第5章で批判的に考察する。

▼91 「より対象者を広く認定すべきとのご意見」という表現も笑止だろう。これは、自分たちをすべて人間として扱えという外国人の要求に対して、両親のいずれかが日本人であれば「人間」として「広く認定す」る「ということが可能との考えになりました」と応じるのと同じくらいどうかしていると思う。注72で述べたように、この程度の「改正」が「第一次案と異なる点の中心」になっていること自体が、「要綱案」の欺瞞を饒舌に物語っている。

▼92 「一言」のはずの「付言」がやたらと長いのは、「改正点」の中身がないことに加えて、挺対協や婦援会らの「賛同」を取りつけるためである(本章第6節)。

▼93 そもそも「促進法」の名称が「戦時性的強制被害問題の解決の促進に関する法律案」であること自体が問題だと思うのだが、どうやら「慰安婦」立法推進派は、日本軍「慰安婦」問題ではなく、日本軍「慰安婦」被害者の「問題」を解決することを目的としているようである。とすれば、彼ら・彼女らにとっては、被害者が全員亡くなってしまえば「問題」は「解決」することになるのではないだろうか。「戦後補償」運動が恐ろしいことにナチスの「最終解決」のような話になっている。

▼94 1931年は日本軍による中国侵略が本格化した(いわゆる「満州事変」の)年であるが、日本政府による「慰安婦」問題の第二次調査報告(「いわゆる従軍慰安婦問題について」)は、「慰安所が設置された時期」について「昭和7年〔注:1932年〕にいわゆる上海事変が勃発したころ同地の駐屯部隊のため慰安所が設置された旨の資料があり、そのころから終戦まで慰安所が存在していたものとみられる」としている。要するに、日本政府の公式見解とのすり合わせをより容易にするために、「要綱案」では「第二次大戦の戦前戦中期」という無難な表現を用いているのだと思われる(もちろん、こうした配慮自体がすり合わせの一環である)。

▼95 弁連協は対象を日本人以外とするよう主張しているので、このコメントは日本の運動団体や関係者に配慮した結果であると思われる。実際、この点は女性国際戦犯法廷以前から日韓の女性団体間の懸案事項となっているらしく、私も関係者から「韓国側は日本人「慰安婦」を「売春婦」呼ばわりして差別している」という主張――単純に言えば、(韓国の)朝鮮人のジェンダー観が日本人のそれよりも保守的であることが日本軍「慰安婦」問題の真の解決を阻害しているという言説――を聞いたことがある。このあたりは不勉強なので現時点では踏み込まないが、「帝国のフェミニズム」と合わせて考える必要があると思う。

▼96 「軍「慰安婦」としての性行為の強制が当時においても違法であったことを明確にするため」なら、なぜそれをそのまま明文化しないのか。弁連協による<内>と<外>での主張の使い分けの典型例だろう。

▼97 「日本のあり方自体がただされるべきであるとの意味」がただ「込められている」らしいだけでどこにも痕跡が伺えないところがポイントである。要は、「国民基金」と同じで、日本人個々人の「善意」(内面)が重要だという例のシラけた話に行き着くのだろう。「要綱案」が下関判決の「論理を最大限生かしてい」るとも考えられないが(本章第2節および第3節)、他者の呼びかけに対する応答可能性であるはずの戦争責任・戦後責任が、いつの間にか(他者の呼びかけを根本では黙殺した)下関判決に対する応答可能性にすり替わっているところが、そもそもの間違いであると思う。

▼98 「軍「慰安婦」に関わる国家の行為が不法であることをより明からにするため」などと言いながら、違法性については絶対に明文化しようとしないのだから、人をバカにするにも程がある。「この法律によって支給される一時金の性格」はやはり単なる「見舞金」でしかない。

▼99 「謝罪」は国会にアウトソーシングするらしい。ちなみに、弁連協は「元『慰安婦』の方々の被害を回復する措置としては、賠償金の支払い、原状回復、公式謝罪、医療費・生活福祉費等の支給、教育普及活動等々があります。要綱案は、この内、補償金の支払いを中心とし、且つ一時金として支払う方式を採用しました。つまり、被害回復措置の中での一つの措置について提案するものであって、その他の被害回復措置を排除する趣旨ではないことを特に強調しておきます」(【資料4】)とも述べている。様々な被害回復措置の中から「補償金の支払い」を(有効な)「一つの措置」として任意に切り離せるという発想は、「国民基金」の論理そのものと言えるだろう。法的責任に結びつかない「道義的立場」それ自体が「非道徳的立場」であると指摘した、ウスティニア・ドルゴボル氏の言葉を引いておこう。

 「*去る七月二~四日、東京の国際連合大学で開催された「ICJ国際セミナー」でドルゴボル氏は、「『道義的責務』の不道徳性について」のレポートをおこなった。そのなかで彼女は、「国民基金」案に触れて、「私〔ドルゴボル氏〕の意見では〔日本〕政府の立場は、義務は法よりも“道徳”であるという立場であり、これ自体が人種差別、性差別に根ざす行為であり、それに同意するのは不道徳的立場である」と指摘した。前記、ICJ国際セミナーの「最終声明」でも上記の指摘が確認され次のようにうたわれている。「七、参加者は、日本政府の責任は法的なものではなく道義的なものであるという政府の主張について、それはレイシズム(人種差別)およびセクシズム(性差別)に基づく行動と通念によるものであるゆえに、それ自体非道徳的立場であると考える。」(鈴木裕子、『戦争責任とジェンダー――「自由主義史観」と日本軍「慰安婦」問題』、未来社、1997年、pp.139-140)

▼100 前節の金昌禄氏の批判(2-2-2)を参照。

▼101 本章第4節および前節(2-2-3)を参照。

▼102 本章第2節第3節および前節(2-3-1)を参照。

▼103 本章第2節第3節および前節(2-3-2)を参照。ここでいう「損益相殺」とやらは、「促進法」推進派のいう「不当利得」という差別的な概念と完全に対応している(第2章第3節)

▼104 本章第3節および前節(2-3-3)を参照。

▼105 内閣官房国家戦略室(局)が目下の最有力候補である(本章第6節)。国家戦略とは要するに「国策」のことではないかと思うのだが、関係者が民主党政権の「国策」に対して抱いている期待については下記などが大いに参考になる。

 関釜裁判ニュース第56号:「鳩山政権の下で「慰安婦」問題の立法解決を」
 http://www.kanpusaiban.net/kanpu_news/no-56/01.htm

▼106 本章第4節および第7節(第四条)を参照。

▼107 同上。そもそも申請主義と委員会の職権探知が二者択一になっていることがおかしいだろう。日本政府の責任を解除するために当事者の「自己決定権」を持ち出す論法も「国民基金」そのままである。

▼108 「順次支給の考えもある」ために「時限法の考えは採らない」というのは、つまり予算不足などの日本側の事情によって「支給」を先延ばしできるということである。また、委員会の職権探知を行わない以上、「地域、人によって5年で完遂できるか難しい」かどうかさえよくわからないのが実情ではないか。「政治的重要性」の低い国に対する「広報活動」がおざなりになり、かつ中途半端に打ち切られるだろうことは、簡単に予測がつく。もっとも、「慰安婦」立法が主要な「ターゲット」としている韓国の場合も、大規模な天皇訪韓反対デモが起こるなどの「反日」ぶりが高まれば、「広報活動」にも影響を及ぼすことになるだろう。北朝鮮に対しては、より露骨な「国益」論が振りかざされるであろうことは言うまでもない。

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